ミャンマー旅行記・タイ編

<津波被災地に行く>
津波被災地にわざわざ「見物目的」で行くのは問題のある行為だ。
なぜならそういった野次馬が結果として現地のホテルや交通機関を占有し、
食料も占有して、必要なところに必要なものが行き届かなくなる恐れがあるからだ。
またその見物という行為自体、現地の人の感情を害することもある。

津波被災地に行こうとした僕はジレンマに陥った。

「これから感染症の危険も増えるだろうし、興味半分で行くなら止めたほうがいいよ。」

ドミトリー仲間の一人にそう言われて僕は改めてその是非について考えた。
確かに見物という目的もないと言えば嘘になる。
しかし、僕の目的は基本的に復興ボランティアにあった。
だからそういった「二次被害」を起こさないためにもバンコクで食料を買い込んだり、
野宿もできるように蚊帳も買ったりしたのだ。

だが、僕は自信がなかった。

たかが個人旅行者の僕が行ったところで大したことも出来そうにないのは分かっている。でも、そのことに意味がないとは思わない。
しかし、世間は僕をどう評価するだろうか?
マスコミに出くわしたら彼らは僕をただの野次馬としてこき下ろすかもしれない。
タイ政府は、復興の邪魔になるからと被災地へ入るのを許可しないかもしれない。
意気込んで行ったのにただ足手まといになるだけかもしれない。
そうなったら、とんだピエロだ。
そんな風にぐるぐる考えた挙句、僕は被害の大きなプーケットやインドネシアに行くのは止めた。



結局僕は行き先をコ・チャン島にした。
かつて先輩や後輩が訪れた島。
そしてもともと予定だったミャンマー旅行に差し障りのない日程で行け、かつ多少の津波被害が予想される島。
そういう中途半端な場所へ。

コ・チャン島があるラノーン県は被害の大きかったプーケットの北にある。
報道では死者・行方不明者170人余り。
だが、よくよく調べていくとコ・チャン島は死者ゼロで、被害も少ないという事が分かった。
果たして僕が行ってみると、そこはバンガローがひとつ壊れただけで津波の影響はほとんどなく、 島は平和そのものだった。


死者は総計15万人を超えた未曾有の大災害。
同じ国で多くの人が苦しんでいるのを知りながら、その島で僕はただリゾートしていた。
なんとも残念だ。

自分にできるのは募金ぐらいしかないと割り切る旅行者はたくさんいた。
そのとおりだ。賢い。
でも、僕にはそんなに簡単に割り切れない。
バンコクに戻り、ミャンマーを旅していた時も、ずっとそのことが引っかかっていた。



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