国境編

デイリー・デラックス・ツーリストバス
 あまりに早く出発しようとしたので、宿のオヤジもちょっと機嫌が悪い。
今日はバスでネパールに向かう予定だ。
一日では目的地ポカラにはいけないので今日は国境の町スノウリに泊まる。
僕はバスが出ているツーリストバンガローと呼ばれるところに向かった。
そこには僕の他に一昨日サールナートで見かけた韓国人学生三人組と三原さんという髭坊主の日本人男性(たこ焼き屋さんだそうで)、欧米人が数人いた。
簡単な朝食をとりバスを待っていたが時間になってもバスは現れない。
その代わり一台のおんぼろバンが現れた。
僕は三原さんと
「ひょっとしてアレに乗るってことだったりして」
と冗談を言っていた。
せいぜい7〜8人乗りの車である。
アレがチケットに書いてあった

「デイリー・デラックス・ツーリストバス」

のはずがないではないか。
だが、冗談だったはずがそうでもなくなってきた。
運転手が屋根に荷物を積み始めたのだ。
僕達は皆一様に顔色が変わった。
「マジでこれに乗んの?」
その後さらにインド人新婚カップルが乗り総勢11人が乗ることになった。
もう笑うしかなかった。この車に10時間も乗るのか・・・・。

 で、いかにして僕たちがこれに乗ったかだが。
説明しよう。
座席の一番前は運転席に運転手、助手席側がやや狭いがインド人カップルの二人が乗った。
二列目の座席は韓国人三人と僕の計4人。
無論常識的に考えれば3人が限界なわけで4人座ると一人が少し浮き気味になる(最悪)。
そして最後列は両側縦方向に向かい合う形で座席が並んでおりそこに二人ずつ計4人座った。当然そこもかなり狭い。しかも揺れる。
そんなこんなで何とか11人座ったわけだが、僕ら2列目が最悪だった。
4人は道中ずっと押し黙って耐えていたのだ。
誰も他の人に「せめえんだよ!」とはいえない。
呪うならあの運転手だ。
こいつはやる気があるのか?
しょっちゅう停まっては遊んでいた。
あるときはサトウキビを積んだトラックからサトウキビを奪ってきてしゃぶり始め

「ほら、君達も一つどうだ?」

と皆にわたしていた。(いいから早く行ってくれ。)

そして、大音量でインド音楽を流しっぱなし。発狂しそう。

 途中、助手席の新婚カップルがみんなにケーキやら果物やらをご馳走してくれた。
この二人は超ラブラブモードで運転手同様ひたすら上機嫌。
そりゃ前の座席は楽だよ。
この二人はどうやらこれが新婚旅行であるらしかった。
新婚旅行に気軽に隣国ネパールに行くというのは結構あるという。
インド人にとってもネパールはいいリゾート地であるようだ。
景色はひたすら平原が続いた。
そして日も沈みかけた頃、僕たちの一行は国境の町スノウリに到着した。



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