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飛行機到着!深夜の首都デリー
2003年12月8日、僕を乗せてエアインディア301便は成田を飛び立った。
格安航空券なのでこの時間に出ればインドには深夜に着くはずだ。
飛行機の中はインド人が多かったが隣の座席は日本人だった。
とはいえ何か会話をする空気でもない。
僕は初めての海外旅行なので不安でいっぱい。
隣の日本人はツアーのガイドさんらしく、飛行機の中でもお仕事中だった。
通路向こうを見るとインド人の若者が大きな声でおしゃべりしていてた。
さて、インドに着くまでにインドを予習しておかねば。と僕はガイドブックを開いた。
いわずと知れた「地球の歩き方」である。
とにもかくにも何らかの情報があるだけで不安はかなり紛れるものだ。
「歩き方」にはこう書いている。
「日本人旅行者が頻繁に連れ去られるデリーの空港。」
「トラブルをどうしても避けたいなら、航空券を買うときに初日のホテルと空港からの送迎を一緒に予約するしかない。」
そう書いていたのでインド初心者の僕は空港からホテルまでの送迎を頼んでいた。
送迎なんて贅沢な気もするが、初日から連れ去られてごっそり金を巻き上げられてしまったらいきなりトラウマだろう。
インドには徐々に慣らしていきたいのですよ。
機内のスクリーンでトリプルXやインドのコメディードラマ(ヒンディー語)を見つつ飛行機がデリーに着いたころには深夜だった。
タラップを降りるとそこはなんとも殺風景な空港ラウンジであった。
でもなにせインドだから、ちょっとくらい見栄えが悪くても気にすることではない。
ターンテーブルに向かう。
しかし荷物が出てくるのにかなり時間がかかってしまい
気が付くと周りにはほとんど誰もいなくなってしまった。
次に両替所でトラベラーズチェックをインドルピーに両替すると普通の紙幣に混じって見るからにボロボロで真ん中に穴あきの500ルピー紙幣をもらった。
これ使えんの?とか思ったが、まあインドだし使えるかなということにしてそのままにしておいた。
いやしかしすっかり遅くなってしまった。
荷物流すのに時間がかかりすぎなんだよ(怒)。
壁の向こう側の人は絶対サボりながら運んでるに違いない。
送迎の人が帰っちゃったらやばいなと思いながら先に進むとなにやら人が沢山いるではないか。
「なんだ、みんなまだいるじゃん。」とか思ったのだがすぐに異変に気が付いた。
みんな僕の方を見ているのだ。
それは先ほど出て行った日本人の団体さんなどではなく、僕のようなカモ目当てに集まるタクシーの客引きやらなにやらだった。
インドだしね、ってもこれは引くよ、ほんとに。
思いがけず一人注目されることになった僕はここで怯んではいかんとわざと胸を張って「お前らなんかたいしたことないもんね。」と余裕の表情で歩いていった。
しかし心の中では「ここで送迎が見付からなかったら困る!助けて」とか思っていた。
しかし不安は杞憂に終わり、すぐ送迎の人は見付かった。
日本人かと思っていたのだが送迎の人はインド人だった。
彼は日本語で「遅いからもう来ないのかと思ったよ」と話し、その隣には他の日本人旅行者もいて今日は同じホテルに連れて行ってくれるのだという。
とにかく今日はこれで何とかなった。
送迎の車に乗り夜のデリーを走る。
車の窓から見た夜のデリーは空気が悪いためかぼんやりと霞んで幻想的だった。
しかし車内ではドライバーがひっきりなしにクラクションを鳴らすので大変うるさく外の景色とは対照的で妙にリアリティーに溢れていた。
他の車もそうで全く鳴らしっぱなしの車さえある。
クレイジー! そして最後まで幻想的な景色に浸らせぬ無謀運転のまま安宿街に着いた。
そこは想像していたよりはるかに混沌としていた。
いったいなぜに首都ど真ん中の道路が未舗装なのだろう?
それよりも牛、あまりに堂々と道路を歩いているではないか。
それに大きな通りに着くとばかり思っていたのにその細い通りはやけに薄暗く陰鬱な雰囲気を漂わせていた。
そしてその暗闇の中で何十人もの人の気配を感じた。
さっきの空港での光景が蘇る。みんなこっちを見ているのではないか?
悪い妄想に取り憑かれそうだった。
僕はこんな得体の知れない場所でこれから旅をしなくてはならない。
ほんとに大丈夫か?でもまあ今日はとりあえず早くホテルで寝てしまおう。
寝てしまえば明日にはすっきりしてなにもかも何とかなるに違いない。
ホテルに着くと送迎の男は簡単な説明が終わるととっとと帰ってしまった。
タシケントパレスと言う名のそのホテルは値段に反して中身は決して豪華ではない。
むしろかなりぼろぼろだ。
バスルームには浴槽はおろかシャワーヘッドすら付いていない。
蛇口から出るような細い水が頭の上から流れ落ちるだけだった。
部屋には何匹ものネズミが這いまわり、窓の外からは激しい騒音が聞こえてきていた。
送迎に2800円、ホテル代が3500円だからインドの物価としては破格の高さだ。
これではタクシーでぼられるのとさほど変わらないのではないかと思った。しかし、初めてだしこれはしょうがない。
こういった需要からビジネスが生まれるのだから。
ともかく今日はもう寝よう、時差分長く起きているので疲れが溜まっている。
そう思い寝ようとしたが、インドに来たという興奮からかしばらくは眠れなかった。
外からは相変わらず騒音が聞こえる。
車のクラクションや、大音量スピーカーから流れるインドの歌、そして一定時間置きに起こる謎の爆発音が鳴り続けていた。
ここいらの住民はこんな騒音の中で寝ているのだ!
全く信じられない。
誰かうるさいと苦情を言いにいったりしないのだろうか?
気が狂いそうだ。とベッドに横になり思っていたが、疲労のためかいつの間にか寝入ったようだった。
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