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ラジュという男
1月9日(木)33日目 帰国まであと一週間
朝食をとりに屋上のレストランに向かった。
レストランには少年が働いていて僕がガイドブックを開いて見ていると興味津々で寄ってきた。
ここどこ?と聞くのに必ず「Why?」と使う変な少年で、何度「Where」と教えても直らなかった。
料理が出てくるまでの間、彼が「チュラ」と呼ばれる七輪で火を熾すのを見ていた。
この日はまずエアインディアのオフィスに行って飛行機の予約確認をし、その後カーリー寺院に行った。
カーリー寺院とはカルカッタでは有名な観光地で、毎日ヤギ等の家畜の首を切って捧げる寺院だ。
僕はその首切りを見たいがために、地下鉄(インドにもある!)でカーリー寺院に向かう事にした。
僕が地下鉄の入り口まで来ると、一人のいかにも怪しい青年が声をかけてきた。
初対面の僕と友達になりたがっているらしい。
彼の名は「ラジュ」。彼が言うには自分はバラナシの大学生でカルカッタには彼の兄と一緒にきたのだそうだ。
まあ、僕は全く信用してなかったから軽く
「ああ、バナラシなら僕も行ったんだ。バナラシの大学ってバナラシ・ヒンドゥー大学(*16)だよね。」
と聞いてみたが、彼はよく分からないようだった。
ほら、怪しい。
そもそも彼の話し方がおかしかった。
始めは微妙に笑顔だったのが少し話すと全く笑顔がなくなっている。
むしろ怒っているような顔をしていた。(友達になりたいんじゃないのか?)
話の内容はいたって平和なのだが、何故こんなに恐い顔をするのだろう?
まあでも、この人はもともとこういう顔なのかもしれないし、気にしないことにしよう。
一通り自己紹介と雑談が終わり、僕はカーリー寺院に行くと言った。
僕は全くそこで別れるつもりだったのだが、ラジュはしきりに
「また後で会おう。」
と言い出した。
なんで?と言っても聞く耳持たない感じだった。
強引な奴だ。
いま道で偶然会った奴と何故いきなりそんな約束しなくてはならないのだ?
まあでもインドでは会って5秒もすれば友達になるらしいからそんなこともあるのかもしれない。
僕は気分でまた会う約束をしてしまった。
二時間後同じ場所で。
僕がそんな気分になったのはパトナーで気付かされた人々の暖かさがここカルカッタでもまた感じる事ができたからだった。
僕はインド人を誤解していた。
ゆえに僕はまだまだ本当のインドを知らなければならない。
そういう思いが僕をもっとインドの人と触れ合わねばという気持ちにさせたのだった。
ラジュはおそらく僕を騙そうとしている人間だったが、そんな種類の人間でもまだ何かあると思った。
僕はその何かを見てみたかった。
ヴィクトリア記念堂。1905年、当時インド皇帝を兼ねていたヴィクトリア女王を記念して作られた。
タージマハルがモデルらしい。
(*16)バラナシヒンドゥー大学:行ったことはないが地図で見る限りものすごく巨大な大学である。バラナシに住んでいてここを知らないはずがない。
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