カルカッタ編

カーリー寺院
 電車を降りカーリー寺院に近づくと途端に人が多くなる。
通りの両側には土産物等の露店が並び、沢山のヒンドゥー教徒で賑わっていた。
ここでは外国人の姿はほとんど見なかった。参拝者のほとんどが地元、インド人だ。
寺院の境内に入り、とりあえず行列の一つに並んでみた。
並んでついて行くと寺の中で僧が数人念仏のような言葉をブツブツと参拝者にかけ、儀式のようなものをしていた。
僕にも順番が回ってきたが、外国人と見るや無視されてしまった。
さて、その後謎の男に首切り場まで案内された。
するとヤギが紐に繋がれてやってきて、男たちはヤギを繋いである紐を柱に固定し儀式の準備を始めた。
すると突然そのヤギは小便を垂れ流しながらグルグル回りだした。
彼は自分の運命を知っているのだろうか?明らかにパニック状態だった。
しばらくするとさらに数頭ヤギが連れられてきた。子ヤギもいる。
そして男たちは呪文を唱えながら、彼らを水で清め、頭に花を乗せた。
水が冷たかったのか、ヤギは震えていた。怯えているようにも見える。
そしてついに、そのうちの一頭が処刑台に連れられてくる。
首を固定され、次の瞬間。

―サクッ―

音はまさにそんな感じ。

男が斧を振りかぶると、いとも簡単に頭と胴体が切り離されたのだった。
地に落ちた首。その目はかっと見開かれ、驚いたような顔になった。
そしてそのあとの光景を見て僕は戦慄してしまった。
乱暴に男たちに引き倒された胴体がびくびく痙攣し始め、足が空を掻いているのだ。
見る見るうちに首から出てくる血が地面を染めていく。
これは気持ち悪い。
頭が無くても体は動くんですね。
人間ももし首を刎ねられたらあんなふうに暴れるのだろうかと考えるととてつもなく怖ろしくなった。
ただの好奇心で来たのだが、見てしまったことを少し後悔した。
処刑台には二頭目が連れて来られている。
殺されたヤギは乱暴に柵に吊るされてもう完全に肉の塊と化してしまった。
僕はもう十分だった。
わざわざ二度も見るようなものじゃない。カーリー寺院を後にした。


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