カルカッタ編

ボランティア最終日
 1月12日(日)36日目。
明日でインドを発つので、今日でボランティアは最後になる。
さあ、今日も頑張ろうと意気揚々とカーリーガートに向かった。
しかし、着いてまず目に入ったのは白い布に包まれた遺体だった。
毎日来る日本人の女の子が言った。
「昨日ね、ここに長くいたお婆ちゃんが死んじゃったの。」
彼女の口ぶりからはこれが特別なことではなく、ごくありふれた事のように感じられた。
死を待つ人の家だから・・・毎日毎日誰かが死んでゆく。
遺体が目の前にあってもここの空気は昨日と変わらなかった。
僕は遺体を前にして少し戸惑ったが、ここをずっと続けていれば慣れていくんだろうなと思った。
それは死を軽んずるという事ではなく、受け入れがたい現実を上手く受け入れていくプロセスなのだろう。

 今日も一通り仕事を終わらせると、ミサが始まった。
今日は日曜なので特別にミサがあるのだ。
神父がカーリーガートを訪れ、儀式が始まる。
驚いたことにさっきまで一緒にボランティアをしていた韓国人のおじさんが白い服を着て神父の横に並んだ。
この人も牧師さんなのだろうか?
シスター達もボランティアも続々と集まってきた。
患者も元気な人はやって来る。
そして、みな一緒に歌う。
 そう、一人患者で元気な人がいて、名前は忘れてしまったが面白い人がいる。
昨日の、患者を風呂に入れる仕事の時は新人の僕に色々指示を出してくれ、また 彼自身患者でありながら自分ができる仕事をやっていた。
よくしゃべる人で、彼は元教師なのだと言った。
その彼も悪い足を引きずってやって来た。

 ここでは神父はファーザー、ボランティアや患者はブラザーまたはシスター、そしてマザーはマザーテレサの事を言う。

そう、言葉も人種も関係無い僕ら家族は歌う事で一つになった。

 僕のボランティアは終わった。
たったの3日間だったがいい経験になったと思う。
できる事ならいつかまたここで働きたいと思う。



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