デリー編

デリーの奇妙な一日ツアー (後編)
 タクシーは最後のインド門に向かって走っていた。
僕は太陽の方向を見て確かにタクシーがインド門に向かって走っていることを確認した。
それにしても初めから気になっていたがこの男、すごく態度がでかい。
身なりも体格もいいし助手席にふんぞり返って座っており運転手は頭が上がらなそうだった。
 さて、問題はどのタイミングで逃げるかだ。
車はどんどんインド門に近づいている。
いっそ信号で停まった時に100Rs置いて走って逃げるか。
しかし、うだうだ考えている間にインド門に着いてしまった。
ランディーと一緒にインド門に向かって歩く。
歩いていくとふとあるものが目に付いた。
よし、これでいこう。

僕はインド門の真下で止まった。
そこには銃を持った警備員(警察?)がいたのだ。
気のせいかランディーはそわそわしていた。
僕はその目の前で
「ありがとう、僕はここから歩いて帰るよ。はい、これ100Rs」
と彼に約束どおりお金を渡したのだった。
初めは
「いいよ、最後まで送っていくからと」
受け取らなかったが、あんまり目立ちたくないからか僕が
「いいからいいから」
と繰り返すと受け取ってくれた。
突然のことで驚いたのか彼はうまく引き止める方法を考えているようだった。
「じゃ、そういうことで」
僕はインド門の写真を撮る振りをしながらインド門の影に入りまんまと逃げおおせたのだった。
花壇を突っ切り道路に出た。
最高にいい気分だった。
「遂にインド人に勝った」
と我ながらしょうもないことで喜んでいた。
だが、それだけでは終わらなかった。
興奮冷めやらぬまましばらく歩いているとなんだか怒鳴り声が聞こえてきた。

「ランディーだ!」

見ると車の窓から乗り出して叫んでるランディーが目の前を通り過ぎた。
程なく車は停まり奴が降りてきた。

「ヤバイ!」

追いかけてくるとは。
そりゃもうダッシュで逃げましたよ。
ここで奴はやっと僕の考えに気付いたのかもしれない。
さすがにもう追っても無駄だと思ったのかそれ以上は追いかけてこなかった。
めでたしめでたし

これがインド門。凱旋門みたい・・・。


 帰り道、急にお腹が空いてきたのでマクドナルドに寄った。
そういえば昼飯を食ってなかった。
インドのマクドナルドは庶民には手が出ないほど高い。
しかし、そこはかなり繁盛していて老若男女インド人がいっぱい。
ベジタブルバーガーセットを頼んだ。
外国人は僕一人でしかも走っていたせいでものすごく汗をかいていたためかなり変な人とだと思われたに違いない。
いや、インド人はこのぐらいじゃなんとも思わないか。
それにしても今日は面白い一日だった。


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