デリー編

屋上にて
 今日はホテルパヤールという日本人宿に泊まった。
インド人と戦い続けて疲れが出たのか急に日本語が恋しくなったのだ。
僕は日本人を探しに屋上に登っていった。
屋上からは夕日が沈み闇に包まれる直前のニューデリーの街並みが見えていた。
あたりは急激に暗くなってきていたがそこにいる人々の熱気は少しも衰える感じがしない。
埃に包まれた街は現実と虚構の間を彷徨っていた。
そんな風景をもう一人の日本人が見ていた。
どちらからと言うわけでもなく話していた。
「ここは街がよく見えますね。」
50過ぎの教授風のおじさんだった。
話を聞いていくとインドは一ヶ月旅行してきており今日カルカッタからデリーに着いたそうだ。
デリーからは30時間もかかったらしい。
「私もね、若いころはあなたみたいによく海外旅行してたんだよ。今回無理やり仕事休んで久しぶりに来たんだけどね。」
「一ヶ月も旅してるとやっぱりどこかで気が緩むんだね、騙されまい騙されまいと思ってたけどこの前ちょっと気を抜いていたら騙されちゃってね。」
おじさんは苦笑いしながら話しくれた。
そうだ、僕も気力が充実している今は大丈夫だけどいつまでも気を張っていられるわけじゃない。
いつか倒れるときが来るのだろう。
その時僕はどうするのだろう。

おじさんと話していたら日もどっぷりと沈んだ。
バザールの裸電球がいっそう輝いて見える。
僕のインドの旅はまだ始まったばかりだ。

ホテルパヤールから見たメインバザール。ついどこがメインなの?と探してしまいたくなる。


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