ポカラ編

トレッキング!
 今日はトレッキング初日。
朝、出発前に3人とホテルのスタッフとで和気あいあいと話しているとき、個人的な話になった。
彼女・彼氏がいるいないの話になったときヘギョンは彼氏がいるの?と聞かれたのだ。
ヘギョンは「いる」と答えた。

(え?なんだよ!いるんじゃん。よかった。)
(告られたらどうしようかと思ってたよ。)←自意識過剰

僕にも話は回ってきて僕も彼女はいると答えておいた。
彼女がいるのに何でこんなところにいるのと突っ込まれたが、それは僕にも分かりません。
そして、そのときのヘギョンの反応もいたって普通のものだった。
「だって、いつもインターネットカフェで彼女にメールしてるもんね。」
なんだ、知ってたのか。

それで、なんだかわだかまりは解けた。
彼氏がいるなら問題ないではないか。
勝手に一人で気にして損した。
もうあんまり気にするのはよそう。
ヒロは彼女がいないからマネージャーに「紹介してくれ」と言い寄っていた。
マネージャーは確か婚約者がいた。
ナラエンは日本人の彼女が欲しいらしい。
みんなの話を聞いて僕は少しみんなが近づいた気がした。

 トレッキングの出発点、フェディまではタクシーで行く。
タクシーのおっちゃんが面白い人でネパール人の結婚様式について説明してくれた。
が、あまり理解できなかった。
なんだか分からんが孫の写真を見せてくれた。

30〜40分してフェディに着き、登り始める。
登り始めて少しすると荷物を担いだ地元の女性が何人も降りてきた。
ネパールの女性はとても働き者だ。
ものすごい重さ(見た感じ30〜40kg)の荷物を背負って山を上り下りする。
ほとんどが女性だった。
 だいぶ歩いて高度が上がると視界が開けてきた。
と同時に民家も目に付くようになった。
ネパールでは集落は谷あいではなく山の上にある。
そして斜面には段々畑が連なっていて絶景だった。
民家は全部木や土で作られており本当に素朴ないい家だった。
鶏や犬が放し飼いされていたりする。

これがネパールの段々畑だ!


集落で機織りしてるお母さん発見。

さらに登ると集落は途切れ森の中に入った。
ガイドのナラエンは見た目は20歳ぐらいに見えるが実は24歳だ。
ナラエンの話では今日泊まるのは彼の姉が経営する宿だと言う。
彼は登っている途中、身の上話をしていた。
4年前、彼は10年ぐらい付き合っていた幼馴染の彼女と別れたらしい。
それがまた悲劇的で彼女の父親が軍人だったらしくその父親はナラエンにも軍人になってもらうつもりだったという。
しかしナラエンが断ると父親は態度を変え、彼女と引き離されてしまったのだと言う。
当然結婚も考えていたと思う。
ナラエンはそれがショックで酒浸りになり今までやらなかった煙草も吸うようになったそうだ。
今では元気になって酒はやめたが煙草は欠かせなくなった。
見た目はとても若いのにナラエンもいろいろあったのね・・・。
聞いてみないと分からないものだ。
しかしながらナラエンは見た目も若いが精神年齢はもっと若いと思う。


行程の半分を越えたころ僕たちは何度目かの休憩をとることにした。
ナラエンがちょっと遠くに行ったときヘギョンがそっと僕に向かって言った。

(笑顔で) 「さっき、私に彼氏がいるって言ったけどあれは嘘なの。」

え?

「海外旅行ではいろいろ危険が多いから、彼氏がいる事にしてるの。本当はいない。」

・・・
・・・
・・・
・・・

で?

それって
「私はフリーですよ。」
って言う意味ですか?(爆)

この絶妙なタイミングで僕にそんなことを言うとは。
ヘギョンが何を考えているかますます分からなくなった。


しかし、そう言われても僕は昨日までのようにぎこちなくなるということはなかった。
僕はもう自分の立場を表明してあったからだ。
だからヘギョンもそれ以上何か言うことはなかったし、
僕たちはそれからも普通の友達として接していた。


でも、あれはいったいどういう意味だったのだろう?
ひょっとしたら、こういうことか?
誰かに言い寄られたりしないようにわざと僕に近づいていたとか。 安全そうだから。

それとも僕の自意識過剰か・・・。

はたまた僕には全然理解できない韓国独自の文化世界の話なのか。

でも、今となっては分かる気がする。
きっとヘギョンにとってはどっちでもよかったのだ。
これは同じ旅をしてきた者だから思うことかもしれない。
「相手にどういう意味で取られようがなるようになるし、 なったらなったでまた面白いんじゃない?」
ということ。
僕はそう思う。


 目的地のポタナには5時間ぐらいで着いた。
標高差で1000mちょっとだから楽なもんである。
心配だった右足の痛みも登りだとあんまり痛まないようだった。
宿のある集落からはアンナプルナの山々がよく見えるらしいがこのときはまだ雲に覆われていて見えなかった。
今日泊まる宿にはナラエンの姉らしき人物が二人いた。

ナラエンと二人の姉。

二人ともなかなかの美人だ。
二人は寒いだろうからと釜戸がある部屋まで案内してくれた。
ロクシーと言うネパールの酒と干し芋のようなものをご馳走になった。
少し酔ってくつろいでいると、二人のほかに続々と家族が登場してきた。
父親、
母親、
弟、
妹まで!
あれ?両親はカトマンズにいるってさっき言ってなかったっけ?
よくよく聞いてみると実はこの家族はナラエンの伯父さん家族なのだと言う。
と言う事は二人の姉は従姉ということになる。
なるほど、こっちの人の感覚だと姉も従姉も大した違いじゃないのかもしれない。
みんな家族同然に暮らしているんだから。
僕はこのアットホームな宿がすごく気に入った。
夜になり、ヘギョンとナラエンと三人でトランプしていたら突然停電して真っ暗になった。
毎日この時間に電気が止まるのだという。
お母さんがガスランタンを点けてくれた。
トランプに飽きるとヘギョンと一緒に辞書を使い英語の勉強をしていた。
隣では弟が数学の勉強をしている。
僕達のつたない英語の勉強を「そんなことも知らないの?」と言うような目で見ていた。
15才だから中学生か。
彼のノートを見せてもらった。
数学だから内容もよく分かる。
日本の中学生とやってる事は大して変わらなかった。
彼にもまた「勤勉」の英単語を教えてあげた。
英語は僕より達者だったがその単語は知らなかったようだ。
この夜はかなり冷え込んだ。
夜のうちに雨が降った。


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