バラナシ編

異国の郵便局は勝手が違う
 バナラシはデリーよりもインドっぽい所だった。
何を持ってインドっぽいと言いうのかは分からないが、
インド人の濃いキャラがますます濃くて、そこらにいる野良牛も野良犬も生のエネルギーが溢れている感じがした。
道端には捨てられた生ゴミを漁る沢山の子犬とその親。
人間同様に道を行き交う牛。 ドラッグの売人もやけに陽気であけっぴろげだった。
「ハッパ、ハッパ?ハシシ、ハシシ。マリファナ、マリファナ。チョコ、チョコ。オンナ、オンナ?」
デリーよりもさらに強烈な個性の街にやって来た。

 今日はとりあえずさらっと町を見て回るのと日本の彼女にプレゼントを届けようと思った。
そう、この日はもう12月20日。
今出さないとクリスマスに間に合わない・・・。
プレゼントはアグラとジャイプルで買ってあったのであとは郵便局で出すだけだった。
僕は近くの郵便局に向かった。
郵便局の窓口には順番待ちの人がたくさん並んでいて、みな我先にと平気で割り込んできたりして殺気立っていた。
窓口の係員も人がたくさん並んでいるにもかかわらず急ぐ様子はまるでなく余裕の表情で別の仕事を始めたりしていた。
結局その郵便局では窓口をたらいまわしにされ、しまいには他の郵便局に行けと言われてしまったのだった。
どうやらそこではEMS(*7)は取り扱っていないらしい。
僕は仕方なく別の郵便局に行く事にした。
 郵便局に向かうためリクシャーを捕まえると郵便局は午後5:00に閉まるから急いだほうがいいと言われ急いでもらった。 現在午後4:20、そこは割と離れた場所でしかもサイクルリクシャーだったので時間が心配だったが4:50にはなんとか着いた。
しかし郵便局について僕は焦った。
入り口がすでに閉まっていたのだ。
「インド人は気が早いから10分前でも閉めるのかな?」
僕は別の入り口から進入した。
そして中の局員に聞いてみるとなんと4:00で閉まるのでダメだと言われたのだった。

あの嘘つきリクシャーめ!

それでも僕は何とか事務所のような場所で話のわかりそうな人にお願いした。
すると相手もかなり渋っていたが何とか了承してくれたのだった。
ところがだ、EMSで送るにはその小包は小さすぎるのだという。
僕はさっき郵便局の近くの縫師(*8)に梱包してもらったのだが中身はペンダントと宝石入れだから小さいのは当然だ。
彼らはこれでは小さすぎるからもっと大きな箱かなんかに入れてまた縫ってもらわなければ出せないと言う。
今から縫っていたのではもう遅い。
また明日出すしかない、諦めてくれと言われてしぶしぶ僕も諦めた。

 帰り道、リクシャーは往復してくれると言う約束だったので同じリクシャーに乗って帰った。
リクシャーマンに「どうだった?」と聞かれたが僕は「閉まってたよ。」としか答えなかった。
郵便局が閉まっていることを知ってたのかどうかなんてもうどうでもよかった。
お前はただ走ればいいんだよ。
機嫌が悪かった。
そして、ホテルまで送ってもらうと奴は悪びれもせず
「長距離を走ったから追加20Rsだ」
とかほざきやがった。
そこでまたぶち切れですよ。
僕は喚いてくるリクシャーマンに喚き返してとっととホテルに入った。
とても疲れた。明日はうまく行く事を願おう。


(*7)EMS:(Express Mail Service)速達便の事。日本まで最低でも3〜4日かかる。

(*8)縫い師:荷物の梱包をしてくれる人のこと。梱包は最後に荷物を白い布で包みそれを縫う。 そして荷物の角に溶かしたロウをくっつけてその上にハンコのような型を押していた。 宛先は布の上に直接黒いペンで書いた。これで本当に届くのかと心配になったものだ。


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