バラナシ編

ヒロシの店
 ホテルに戻りチェックアウトする。
そして別のホテルへ。
デリーで会ったヒロからバナラシに行ったら「フレンズゲストハウス」に行けと言われていたのでそこに行く事にした。
確かにヒロが言った通り家族経営でとても感じのいいところだった。
100Rsで屋上のシングルルームに泊まる事にした。
屋上というのがとてもよい。バナラシにいる間はずっとここを使おう。

 さて、今日はとりあえず昨日失敗した郵便物の発送をしなくてはならない。
まずは近くのEMSを扱う郵便局を探さなくては。
さて、いったい近場の郵便局はどこにあるやら。
このようなときインドでは困らない。
なぜならすぐにいろんなインド人が「どこに行くの?」「何をしたいの?」と聞いてくれるからだ。

・・・超うざいけどね。

その中に日本語を割と話せる少年がいた。
普通なら日本語を話す奴に対する警戒度はかなり高いのだが、少年だった事もあり少し興味を持った。
少年はおおよそ14〜15歳に見えるのに、唇の上に蓄えた立派な髭がアンバランスな印象を与えた。
いったいこいつは僕をどうするつもりなんだろう。
僕は郵便局に行かなければならないことを告げると彼はすぐ案内してくれた。
まだ梱包してなかったので近くに縫い師を探したが見つからずウロウロすると少年は
「それなら僕のオジサンのところで出来るよ。」と言った。
そらきた。
そしてやはり「オジサンの所」は服や布切れを売る店だった。
そのオジサンは「ヒロシ」という名前だった。
怪しい。
名前で親近感を持たせようというつもりなのだろうか?
インド人の思考は良く分からない。

中に入るとその「ヒロシ」と少年の兄らしき人物がいた。
「ヒロシ」は意外にも20〜30代の若さであり、梱包代をいくらにするかを交渉した。
彼が「50Rsだ」と言うと僕はすかさず「高い!」と言って店を出た。
これはフェイク。
彼らは引き止めようと必死だった。
なめられたらいかんからね。
そんなこんなで出たり入ったりを繰り返したが値段が決まらず交渉をしながらも彼らは僕に次から次へと彼の商品を見せていった。
そして僕を信用させるために彼らの客が残した情報ノートを見せてくれた。
それを見るとよくもまあみんな騙されているもんだ。
2〜3割値引きしてもらって喜んでいたりしている。
違う!こいつらはこんなもんじゃない。
僕はクルターとパジャーマー(*10)が欲しかったのでいろいろ見せてもらい9$のクルター・パジャーマーを300Rs(約750円)で購入した。
ところが買う気が無いのにまだいろいろ見せてくるので適当に答えていたら300Rsのショールが簡単に120Rsまで下がったのを見て彼らのボリ方が半端じゃない事に気付いたのだった。
しまった!奴らのほうが一枚上手だったというわけだ。
結局パッキングはシルクのショール2枚を送るものの中に入れてあわせて440Rsに決まった。
今思うと高い買い物である。(ちなみにクルター・パジャーマーはモノによるが200Rs出せば買える)
少年はヒロシの店を出た後もついて来た。
そして、郵便局に案内してくれて、贈り物を無事届けることが出来た。
郵便局では初めはEMSは出せないと言っていたのに
「看板にEMSと書いてあるじゃないか」
と言い続けたら受け取ってもらえた。
実にいい加減なものである。
さて、用は済んだのだが少年はまだついて来た。
「どこに行くの?」と聞かれ「飯を食う」と答えると彼も一緒にレストランに入ってきた。
なんとラーメンが食えると言うのでそこに入ったのだがスープに味付けした形跡がほとんどなく、くそまずかった。
少年はそのときジュースを頼んでいた。
僕が「なんか食えば?」と言ったのだがお金ないからいいのだという。
そうだよな、おごってもらえると思ったのかもしれないけどケチな日本人で残念だったな。
そのとき初めてその少年の名前を聞いたのだが忘れてしまった。
彼には12才の弟と兄がいると言う。
兄のほうは店で見た。弟はいなかったが情報ノートによるとかなりのやり手らしい。
まだ子供だからと油断してたくさんの日本人が弟についてくるようだった。
まあ、僕も子供だろうと油断してつられた一人だったんだけどね。 商売に愛嬌はとても重要と言う事だ。


「ヒロシ」の店にて。少年(右)とその兄(中)。(ヒロシ撮影)

(*10)クルター・パジャーマー:インド男の普段着。ゆったりとしたシャツとズボンのこと。熱いインドではこれが一番合っている。ちなみにパジャマの語源はこのパジャーマーのことである。


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